人生はロングドライブ

いつの間にやら人生後半、気づき感じる日々を疾走中

BMW M440i


今年の夏の一大イベントは自分でもびっくりだったがクルマを買い替えたこと。11年乗った愛車は二世代前のCクラス、色は金色。気にいっていたし、特に不満もなかった。というか、最近乗り味が良くなったような気がしていたくらいだ。

それでも、さすがに11年目、来年の2月には7回目(!)の車検がやってくる。そこで、とあるテレワークの夕方、仕事を抜け出して、近所のディーラーへ向かう(こういうところがテレワークのいいところ)。

お目当てのクルマはBMW4シリーズ、4ドアのグランクーペ。このクルマが発表されたとき、巨大化されたキドニーグリルの話題で持ち切りだった。ブサイク、ブタ鼻、さんざんな評判だったが、自分にはシックリきた。なんか個性的でいいじゃん。でも相当にお高いからちょっとムリ、そんな印象のクルマだ。

この手のクルマはあまり人気もないのだろう、街中でもそんなに見かけない。でもそれがまたいいじゃないか。価格も中古であれば多少はこなれてきているようだ。

このクルマには4気筒の420iと6気筒のM440iがラインナップされている。気になるのはM440i、中古でもお高いのだが、せっかくなら6気筒がいい。シルキーシックスと言われるBMWに一度は乗ってみたいと思っていた。

ディーラーに着くと420iもM440iもあったが試乗はできないとのこと。まだ納車されたばかりで、ナンバーがついていないらしい。残念、そう思っていたら「クーペなら乗れますよ」と声を掛けていただいた。2ドアは何だかんだいって不便なので検討の対象外。それでも同じ6気筒エンジンなのでと乗ってみることにする。

M440iクーペは白いボディに赤いシート。うーん、いくら何でもこの赤皮シートはちょっと派手すぎる。そんなこと思いながらクルマに乗り込み走り出す。正直なところ今のクルマとあまり変わらない印象。それより車幅が大きいいし、乗りなれないから、運転自体に気を使う。

ところが、短いカーブが続く道に出ると印象が変わった。ハンドルを切る感覚がなんか違う。クイックというわけでもないのだが、思うようにクルマが動く感じで新鮮だ。そして開けた道に出ると、ディーラーのおじさんがこう言った。

「ちょっとアクセル踏んでみましょう」

言われた通り恐る恐るアクセルを強めてみた。


ウイーンんん、、、、ひゃー何じゃこりゃーー。はやいーーー。
しかも速いだけじゃない、なんか気持ちいい。
エンジンの音、走り味、そして加速感、そのすべてがいい感じ。
これかー、これがBMWの6気筒か。なんか面白いし、何といってもたのしー


ディーラーに戻り、まじまじとクルマを見る。うーん、かっちょいい。ライトにはレーザーライトと刻印が入っていて、しかも青色(M440iのみ)。ミラーカバーもシルバーでアウディのSシリーズみたいだ、内装もいい感じ。シートも上質なので、赤皮も悪くないな、そんなことまで思ってしまった。


最近のクルマはダッシュボードにタブレットを置いただけのようなメーターパネルが多い。ベンツなんかも、みんなそんな感じ。これにはどうしても違和感があり、新しいクルマに触手が伸びなかった一因でもある。

M440iのメーターパネルも液晶だがちゃんとフードの中におさまっている。仕立ても上品だし。もっともBMWだって新しいクルマはタブレットタイプに切り替わっている。カーブドディスプレイというらしいが、何の工夫もないデザイン。こちらにはココロがまったく躍らない。

BMWといえば「駆け抜ける喜び」。それは走りだけではなく、そのクルマの雰囲気や佇まいも含めたものだと思う。ハンドルを握った感触や、その時に見える景色。室内の雰囲気だって走りと同じくらい大事なのだ。

いずれにしても新車を買うわけではないのだから問題ない。逆にこちらの内装モデルでないと困るくらいだ。そして意外だったのは後席。クーペの後席といえば2+2が当たり前だと思っていた。このクルマは3シリーズをベースにさらにホイールベースを伸ばしている。だから頭上の余裕はないが、大人が十分座れるスペースを有していた。


なるほどー。
考えてみれば、最近は家族でクルマに乗ることなんてほとんどない。というかほぼひとり。旅行だってお気楽ひとりドライブ旅が最近の定番。だったら2ドアでいいんじゃない?そんな思いがふつふつと湧いてくる。

考えてみれば、2ドアクーペって贅沢な存在じゃないか。昔からベンツやジャガーにはクーペモデルがラインナップされてきた。今では絶滅危惧種かもしれないけど、ジェントルでパーソナルなクーペ。それもBMWの6気筒。速いけど速さを競うわけではない、内に秘めた余裕。

僕もこんなクルマが似合う歳になったのではないだろうか。単に歳をとっただけのオッサンなのにそんな気持ちで胸がいっぱいになる。まったくいい気なもの。

家に帰って対象を4ドアだけでなく、2ドアクーペにも広げて調べ始める。すると別のディーラーにブルーのM440iクーペを見つけた。僕にとってクルマは特別な存在だから、色にもこだわりたい。リセールが高いからと言って白や黒を選ぶなんてことは考えられない(それなのに8割がたの4シリーズが白か黒だった)。

早速、次の日の会社帰り、そのディーラーを訪れた(仕事もやってます)。このディーラーは新車も扱っているお店、最新の5シリーズなどピカピカの新車たちが所狭しと置いてある。ちょっと敷居が高い感じだ。


お店の人に案内され車庫に向かうと、メタリックカラーのブルーなM440iが鎮座していた。ひえー、かっちょいいぜー。昨日見た白のM440iもよかったが、こちらの方が数倍カッコいい。ボディが光り輝き一層引き締まって見える。


それにこのクルマの内装がまた素晴らしかった。皮シートは濃い茶皮、そしてインパネまわりは木目のダッシュボード。シブいなーニクイなー、さらになんとサンルーフまでついていた。非の打ちどころがないじゃん、すでにこの時、僕のココロは決まっていた。

それではと試乗をお願いするも、こちらもまだナンバーがついていない。「試乗しないで購入する人も多いですよ、BMWですからご安心ください。」お店の人はこう言うのだが、これだけは譲れない。というかこんな高額なものを試乗もしないで決めてしまうものだろうか。なんか遠方のお客も多いらしく、最近はそんなケースが増えているらしい。


家に帰り、妻に写真を見せて相談する。ちなみに家族はクルマには全く興味がない。
「いいんんじゃないのもう長いしね」こんなリアクションだったので、これはGOサインが出たと勝手に判断する。週末行くので試乗できるようにしてほしいとディーラにメールを送った。

土曜日、ディーラーがオープンするのと同時に家族と店に入る。週末だからかすでにお客が何人も来ていた。この店の接客は新車だろうが中古だろうが変わりがない。敷居が高く感じられた店内の雰囲気も、今日は買うつもりで来ているからか逆に居心地がいい(我ながらいい気なものだ)。

家族を後席に乗せ、ちゃんと座れることを確認したら、さあ試乗だ。営業の方が頑張って中二日で準備してくれたらしい。

ウイーンんん、、、、ひゃー何じゃこりゃーー。はやいーーー。
しかも速いだけじゃない、なんか気持ちいい。


デジャブ。
白いM440iを試乗した時と同じ感想だ。でも若干このクルマの方が静かな気がした。それに内装が上品で僕好み。サンルーフもあるので室内が明るくて開放感がある。決まった。そう思い、ディーラーに戻りあっと言う間に契約をしてしまった。

この週の火曜日に4ドアのグランクーペを見に行き2ドアのM440iを知る。翌日の水曜日このブルーのM440iに出会い、土曜日に契約。我ながらびっくり。

「実は昨日このクルマを見たいと電話があったんですよ。今日約束していたので断りましたが、タイミングよかったですねー」営業の人がそんなことを言う。ウソかホントかわからないけど気分はいい。

そして三週間後、ブルーのM440iがやって来た。
もちろん予算はオーバーしている。本当は買えない値段だったけどムリして買ってしまった。銀行で、僕の口座にあった預金をほぼ振り込んでしまったら、銀行員がこのひと詐欺にあってんじゃないのって顔で僕を見ていた・・・。


僕は今年57歳になる。
60歳で定年を迎え、その後の生活が最近は不安で仕方がない。でも、働いてるうちにしたいことする方が大事なのではと思うようになった。したいことしないで、老後を迎えてしまうことの方がよっぽど不安だ。

若いころには未来があった。
57歳の今でもあるが、若いころとは時間の総量が違う。若いころにはたくさんの未来があったから、我慢もできた。そのうちにという希望をもった我慢だ。

でも今は違う。いま我慢をしてどうなるというのか。我慢をしたまま老後になって、未来がなくなったら何も残らないではないか。

したいことや、やりたいことはできるうちにしなければならない。それがオッサンと若者との違いだ。

何も贅沢や浪費をしろということではない。自分にとってココロ躍ることがあるなら躊躇せずすべきということ。少しばかりの無理をしたってなんとかなる(ハズだ)。


そんな希望をもって、これからM440iと共に過ごしていくつもり。楽しみで仕方がない。

ウイーンんん、、、、ひゃー何じゃこりゃーー。はやいーーー。
しかも速いだけじゃない、なんか気持ちいい。

たのしいー。