週末、用もないのにBMW M440iに乗って出かける日々。もともとドライブは好きだから、あちらこちらに出掛けていた。でも、このクルマは走らせること自体が楽しい。
普通の道を低速で走っている時も、走り味が上品で気持ちがいい。道が開け、アクセルを踏み込むと物凄い加速で突き進む。その時のエンジン音がまた気持ちいい。箱根ターンパイクのような緩いカーブの上り坂など、ほんと気持ちがいい。
気持ちいがいいと三回も言ってしまったが本当にそうだ。クルマとしての完成度も高いのだが、やはり6気筒エンジンによるところが大きい。パワーは387馬力。この最大馬力を使えるシーンなんてないし、使うことも無いだろう。でも、この余力がこのクルマの魅力を作り上げている。低速でも高速でもこの有り余るパワーがこのクルマの余裕綽々な走りを生み出している。
4シリーズには4気筒の420iというモデルもある。このクルマも184馬力あり、普通に走るには十分なパワーだ。しかも外観や内装はM440iとほぼ変わらない。それなのに新車の価格は400万も違う(400万ですよ、400万!!)。
2気筒増えただけのM440iにそれだけの価値があるのだろうか。1気筒200万円だ(単純)。
正直あると思う。
このプラス2気筒がM440iの走りを生み出している。さらに言えばそれがこのクルマを所有している満足感にもつながっている。BMWのブランド戦略に乗っかちゃってると言えなくもないが、BMW自身がこの6気筒エンジンの価値を認識しているということ。商売ってそういうものだよね。
何ごとも一芸に秀でることは大事。M440iに乗っていると、いざとなったら俺は速いんだぜ、という秘密兵器を隠し持っている気分にさせる。どこでこの武器を使おうかな見たいな感じ。
話は変わるが、クルマを買い替えようと思ったきっかけは、知り合いがオープンカーを買ったことだった。同じBMWのZ4なのだが、知人にオープンカーを買うと世界が変わると言われ、思い切って購入したらしい。
その話を聞くまでは、クルマを買い替えることは想定していなかった。2世代前のCクラスに満足していたし、定年後に向けたお金の不安もあったから、買い替えたとしてもできるだけ安価にすませたいと思っていた。
でも知り合いがオープンカーを買って世界を変えたいと思ったという話を聞いて、自分も変えたいと思った。こんなにクルマが好きなのに何で何も変えようとしないのかと思ってしまった。
そして自分は何がしたいのか、どんなクルマが欲しいのか検討し始めて行きついた結論がM440iだった。これまでの自分だったら、外見や内装は変わらないのだからと420iを選択していただろう。
僕は、この時オープンカーと同じように一芸に秀でた何かが欲しかった。そしてその一芸によって自分を変えたかったのだと思う。その一芸が6気筒だったというわけ。まったく影響されやすい自分にもびっくりだけど、結果的に満足しまくりなのは前述のとおり。
時には思い切って、欲しいものを突き詰める、そんな考え方も必要だ。節約することばかりがいいことではない、ましてや安さだけがすべてでもない。節約や安さ、効率の良さだけを優先していたら、そんな自分になってしまう。そんな生き方は寂しいじゃないか。
一芸に秀でることは人間にとっても大事なこと。僕にとっての一芸は何だろうか。30年以上のサラリーマン生活で培った経験やノウハウは多少ある。でもそれは仕事上での話、僕自身が求めたものでも僕にしかできないものでもない。あくまで組織あってのものだとわかっている。
だからだろう、きっと僕は僕だけの一芸が欲しかった。だから一芸に秀でたM440iを求め自分のものにしたかった。そして自分を変えるきっかけにしたかった。いくつになっても目標を持つことは大事、そのきっかけを自分で作ることも同じく大事、歳を重ねて知ったことの一つ。
僕は些細なことでもいい、色んなことに気づき感じることができる自分でありたい。そんな所作に秀でた人間になりたい。簡単なようで難しい。すぐに人様の常識やいつもの日常に流されてしまいそうになる。ささやかな一芸だけど、自分の考えを表現して、誰かに伝えられたら最高だ。
M440iに乗って、色んなことに気づき感じ考えたい、そんな人生を送りたいと思う。楽しそうでしょ、楽しいに決まっている。そんな毎日を送ることに決めたのだ。たーのしー。