9月の頭、山形へとドライブに向かった。
最近は年に3回くらい、ひとりドライブ旅行に行くのが定番になっている。最初はひとりでなんて寂しいなーと思ったが、慣れてくると居心地がいい。なにせ人に気を使わないでいい。家族や親しい友人であっても、やはり同行者には気を使う。
何を食べよう、どこに行こう、自分の意見だけでは決められない。それに比べてひとり旅は何をしようが自由だ。
俺は自由!そんな人間本来の渇望に気づかせてくれる(大げさ)。行きたいところに行って、食べたいものを食べる。若いころには考えられなかった大人の所作。
僕のひとり旅はドライブが目的であって、目的地が目的ではない。だから観光地を目指すというよりも、走ってみたい道を選ぶ。そんなお気楽ドライブだ。
今回は、山形にある蔵王エコーラインに向かった。蔵王というと冬のそそり立った雪の壁や樹氷が有名だが、僕は夏の緑あふれるエコーラインを走ってみたかった。
東北自動車道を北上し、白石インターで降りる。道の両脇には果物屋さんが並んでいる。今の季節はブドウだろうか。お土産を選び買って帰るのも楽しみだ。人を喜ばすのは嬉しいもの。エコーラインの入り口には鳥居が立っていた、何やら特別な場所に入り込むよう。ひとり雰囲気が盛り上がる。
M440iで初めてのロングドライブ、サンルーフを全開にして山道を軽快に駆け上がる。
「駆け抜ける喜び」ホントいい言葉だと思う。直6の心地よいサウンドが聞きたくて、音楽もラジオも消す。緑に包まれた登りみち、余裕綽々の力強さで走り抜けるM440iは、あーさいこうだ。
途中、名所「御釜」による。目的地が目的ではないと言いながら、ここは見ておきたかった。蔵王山頂レストハウスへと向かう道、ちなみにここだけが、有料の観光道路となる。面白いね。
クルマを降り、歩いて御釜に向かったのだが、その時のお召し物は短パンにポロシャツ。何と寒いじゃないのよさ。夏のあちーあちー真っ盛りの日、まさかの涼しさだ。恐るべき蔵王。
数分も歩くと御釜が見える場所に着いた。いやー素晴らしい、ココロが一気に晴れ渡る。ちょうど雲の切れ間から陽が差して御釜がエメラルドグリーンに光りだした。ホントすばらしいや。日本にはこういう場所があるのだねー、まだ見ぬ光景がたくさんある。
満足したし、寒いのでそそくさと駐車場に戻る。すると、真っ赤なフェラーリが停まっていた。最新のモデルではないようだが、車高の低さが際立っている。
よくこんな峠道にフェラーリで来るよなー、くねくね道を走って怖くないのだろうか。そういえば、山形出身の元フェラーリデザイナーのケン奥山さんがエンツオ・フェラーリで捕まったのはどこだったのだろう。一般道で速度制限を80キロ越えていたとか何とか。
こういう開放感のある道に来ると、人は気持ちを高ぶらせてしまうのだろう。わからないでもないが、高性能車に乗っていると自制心が必要だ。気をつけよう。
でも、こんな風にココロを高ぶらせてくれるのが旅だと思う。どこに行ったか、何を食べたかが旅の目的ではない。小沢健二の「ぼくらが旅に出る理由」、この曲は旅とは旅行でも観光でもなくて、前に進むこと、まさしく人生そのものであることを教えてくれる。
今回の旅行で一番楽しかったドライブは、山形から米沢に向かう一般道。なんてことない普通の道だが、そこに暮らしている人たちの生活を感じながらドライブするのは面白い。初めて見る景色、そこで暮らす人々、行き交うクルマ、信号待ちをしている女の子、みんなの人生を横目で見ながら自分の人生をドライブする。
いやーたのしい。日本全国色んな所に行って見よう。その街の空気や人々の生きざまを感じ取って自分のエネルギーにする。俺ってズルいなー、そんなこと思う。
山形には二泊したが、二日とも夜は酒と食料を買い込んでホテルで食べた。食材だって近くのスーパーで買った普通のもの。ホテルの部屋で自由気ままに非日常な時間を過ごすのが楽しい。有名な店で美味しいものを食べる、そんな過ごし方もあるだろうが僕にとっては億劫だ。
山形に来たからには夕食はこれを食べなきゃいけない、なんてことはない。自分がしたいことをすればいい。この旅で何をしたいか優先順位は自分が決めること。僕の旅の目的はドライブだもの。人生だって同じ、人と同じようにしなくていい、ましてや人に決められたくなんてない。自分の人生は自分が決めて自分で実行するのだ。たのしー。