
30数年間のサラリーマン生活、そのうち三年間だけ地方勤務をしたことがあった。すでに家族を持っていたので、単身赴任。
旅行でしか訪れたことのない場所、三年の間そこに住み、何で僕はここにいるんだろうってずっと思っていた。居たくもない場所で暮らすことは僕にとって苦痛でしかなかった。
人によってはいろんな場所に暮らしてみたいって人もいるだろう。会社の中にも、ずっと各地を転勤している人が結構な数いる。そうする中で役職も上がって出世していく。たくましいよなー、本気でそう思う。
自分が住みたい場所に住むのと、会社に指示された場所に住むのとでは全く違う。天と地くらい違う。それでも仕事だからと割り切って暮らせる人はホントすごい。
でも、そんな人たちに話を聞くといつかは故郷で暮らしたいと言う。現に正月やお盆休みにはせっせと実家に帰る。
なんで生まれ育った故郷は居心地がいいのだろう。僕も三年間しか単身赴任していなかったが、家に帰るとむちゃくちゃ気分が良かった。安心感という言葉が適切かもしれない。
自分の家が居心地がいいのは当たり前として、故郷の街の雰囲気や空気感、これが自分の脳みそからカラダまでピタッと同期し合う。何とも言えない居心地の良さ、安心感、そんなものに包まれる感覚がある。
単に友達や知り合いがたくさんいるからということではない。普段は気づかない、そんな自分の感情、感覚に気づくことができた。そういう意味ではたった三年間の単身赴任だったが、貴重な経験をしたと思っている。そうしなきゃわからなかったものね。故郷の大切さを軽んじてしまっていたかもしれない。
僕は、思い出には実体があると思っている。
おかしなこと言うなよー、もうボケが始まったのかと言わないでほしい。故郷で暮らし経験した数々の出来事、思い出は実態となってその場所に残っていると思うのです。だから知らずのうちに故郷に帰るとその場所の空気に含まれているその実態と一緒になることができて、何ともいえない気分になる。
今はもうこの世にいない人たちも、実はその場所の空気の中にいるんだと思う。そうじゃなきゃ、みんながみんな故郷に戻ってくるなんてありえない。この場所には思い出が確かな実態となって存在していて、自分と波長し合っていると思う。
自分は一人と思っていても、そうじゃないんだよねー。今まで接したきた人なんかに包まれながら僕らは生きている。なんかそう考えると楽しいじゃん、それに元気になってくる。
逆に言えば、僕らは他の人の一部にもなっていると言うことだ。そう考えるとこれまた面白い。やっぱこの世は不思議だよね。
僕らが旅に出る理由もきっとここにある。知らない土地の空気に触れて、その土地の直接的な景色だけでなく、そこに暮らし生きてきた人たちの想いに触れる。そして刺激を受ける。だから旅は面白いんだね。
どんどん色んなところに出かけるのがいいと思う。そして大事な故郷に戻ってくる。それでいいんじゃないかな、そんなふうに思います。
