
若い頃、出張する度にあちこちの駅弁を食べるのが楽しみだった。そんなに美味しいわけでもないが、見知らぬ土地を訪れ、そこでしか食べられない駅弁を食べるのは風情がある。
僕は横浜で生まれ、横浜で育った。とはいえ、横浜名物のサンマーメンなんて最近まで知らなかったし、地の物なんて特に意識したことはない。そういう名物的なものがないところが、都会だし、横浜のいいところだとずっと思ってきた。
そんな僕も子供の頃からよく食べたものがある。崎陽軒のシウマイだ。醤油差し(ひょうちゃんというらしい)の栓を抜いて、シウマイにかけて食べる。シウマイにはグリーンピースが入っていて、こんなもの入っていないほうが美味しいのになとずっと思っていた。
シウマイ弁当もよく食べた。僕が子供の頃はホカホカ弁当なんてないし、そもそもテイクアウトのお弁当やお惣菜なんてそんなに種類もなかった。今の様に宅配だってない、出前と言えばお蕎麦にお寿司、お客様が来たときに頼むものだった。
そんなとき、たまに母親が今日はご飯作るの面倒だなーと思う時があったのだろう、そういう時は決まってシウマイ弁当だった。子供にとってシウマイ弁当は地味な食べ物、なんてったってお肉が入っていない。そんなシウマイ弁当の中で一番好きだったのはシウマイではなくお魚の照り焼き。これは子供ながらにむちゃくちゃ美味しいと思っていた。逆に他のおかずはどうでもいい、そんな印象のお弁当。
だからシウマイ弁当は、お魚の照り焼きが入った地味なお弁当、ずっとそんなイメージだったのだけど、歳をとってからその印象は大きく変わった。昔から変わっていないはずなんだけど、久しぶりに食べたシウマイ弁当はむちゃくちゃ美味しかった。
お魚の照り焼きが美味しいのは変わらずだが、たいして美味しくもないと思っていたシウマイもなんか独特で旨い、そして筍の煮付けや卵焼きに鳥の唐揚げ、そして昆布や生姜にあんずといった引き立て役も相まって、むちゃくちゃ美味しいじゃんと今さらながら感動した。
とくに思ったのがご飯の美味しさ。お弁当だから冷たいのだけど何故か味わい深いご飯、そこにかかったゴマ、そして梅干し。なんだ、この弁当完璧じゃん、そんなことに気づいたのは40歳を超えたあたりだろうか。
いつも近くにいた幼馴染の素晴らしさに気づかなかったうぶな青年じゃあるまいし、今さらながらそんなことに気づくなんて、あー僕の人生は何を学んできたのだろうか。
でもでもでも、今さらだって美味しい物は美味しいのだから、今からだって愛しちゃうぞと、シウマイ弁当にゾッコンらぶなオッサン57歳。
こんなだから、たまに会社帰りにもシウマイ弁当を買って帰る。たまには食事を作るの面倒だろ、と妻を愛しむ様なふりをして、自分が食べたいシウマイ弁当を家族の分も買って帰る。そして赤ワインと一緒に食す。これがサイコーなんだよね。
そもそもシウマイ弁当のおかずって、つまみとしても最高級。だから赤ワインを飲みながらシウマイやその他のおかずをつまむのも最高だ。そして締めのご飯、筍の煮付けや梅干しと食べるごはんさん、これが本当に最高だ。ぜひ皆さんも試してほしい。
たぶん、シウマイ弁当ってかなり塩分が高いと思う。これが酒のつまみに最高なんだよねー。赤ワインにシウマイ弁当、これって幸せを表していると思う、これを食べてていると本当に幸せだ(おっさんの幸せなんて安いもの)。ぜひ皆さんもお試しあれ〜〜(よっぱらい)。
