人生はロングドライブ

いつの間にやら人生後半、気づき感じる日々を疾走中

昔からある美しいモノ



僕はロードムービーが好きだ。なんてことはない話なんだけど、旅などを通じて色んなことが起こる、そんな物語にいつの間にか見入ってしまう。

映画であれば昔見た「テルマ&ルイーズ」が印象的だ、印象的なはずなんだが内容はあまり覚えていない。女性二人があてもなくクルマで旅をする話だったような気がする。

ロードムービーはお正月にぴったりだ。テレビ局も分かっているのだろう、年末年始の恒例とばかりに延々と繰り返し放送している「孤独のグルメ」なんてその筆頭だ。他にも年末ではないが「バス旅」なんかもそう。太川陽介さんと蛭子さんのコンビは今見ても最高だ。

「箱根駅伝」なんかもその類。半日かけてマラソンをズーっと見ているのだから不思議なもの。今風に言えば、コスパがとんでもなく悪い。でもお正月だからいいのだ。実際、他の駅伝大会なんか結果も良く知らない。

駅伝をボーっと見ていたが、今年は富士山がキレイだ。先日の「日本平で富士山ざんまい」にも書いたが、ほんと富士山は素晴らしい。なんであんなにもキレイなのか。ホントこの世の奇跡だと思う。

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勝手なこと言えば、日本にあるからこその富士山ではと思ってしまう。平凡な日本の街並み、海に囲まれた島国、そんな中に突然現れる富士山。まわりにはそんなに大きな山々はないから余計雄大に見える。

なんか景色がマッチする。たぶんロッキー山脈の中に富士山があってもこんなに美しくないだろう。富士山はまわりの海や街、何気ない景色とセットで構成されている奇跡のシーンなのだ。

NHKで葛飾北斎の特集をしていた。その中で言わずと知れた「富嶽三十六景」について紹介されていた。いろんな場所から見える富士山を描いた版画だ。番組では「ベロ藍」というプルシアンブルーの顔料を使って、大衆向けの絵を描いたことで大ヒットしたと言っていた。

今でも東京の街中や遠く離れた千葉なんかからも見える富士山、江戸時代の人たちもそんな富士山が見えるたびにスゴイナーと思っていたに違いない。だからこそ、北斎の「富嶽三十六景」は庶民の心を打った。

それを当時最新の顔料を使って美しく描いた北斎、最新の武器をどう使うべきか、単なる芸術家ではなくマーケッターとしての才覚も有していたのだろう。

この富嶽三十六景のなかで「凱風快晴(がいふうかいせい)」という絵がある。夕焼けに染まる赤富士だ。この絵を見てアッと思った。先日の日本平からの帰りに見た富士山と同じだったからだ。

夕焼けに赤く染まった富士山、まだ空は青い、このコントラストがすごいのだが、この絵を見てまったく一緒じゃんと思ってしまった。

そうかそうか、そうなんだねー、僕が見た富士山は江戸時代の人たちも見ていた富士山なんだ。そして同じようにスゴイナー、美しいなーと感動したんだ。あの葛飾北斎も。

そう考えると江戸の人たちに親近感を覚えるし、時代は違えど人は皆、同じように感動するのだなーと思った。江戸も令和も大して違いない、僕ら人間は同じようにできている。

最新のものを求めるばかりではなく、たまには昔からある美しいものを探してみるのもいい。自然だけだけではなく、昔も今も変わらない美しいものはもっとたくさんあると思う。

そんなものを見つけに出かける旅は面白いかも。それこそロードムービーだ、今度そんな番組放送してくれないかなー。横着で困っちゃうね、自分で行けよー。